鎖が鳴った。
私と、夜神 月を繋いでいた鎖が。
カシャンッと空しい音をたてて床に落ちた。
やれやれこれでやっと自由だ。
夜神 月のそんなため息まじりの安堵の声が聞こえてきそうだった。実際には彼は、左手首に微かにのこる
拘束痕を撫でさするだけで、いたって無表情だったが。
「キラだと疑ってすみませんでした」
弾かれたように彼が顔をあげた。驚いたように私をみた。
「月くんはキラじゃありませんでした。今まで申し訳ありませんでした」
それは死神の持ちものである死のノート。そこに記された13日ルールによって、証明された。
「…びっくりしたな」
すこし口を噤んで、それから彼は微笑みながら言う。微笑んでいないその目。
「竜崎が僕をキラじゃないと認めるなんて」
「実際そうだったのだから認めて謝るしかないでしょう。許していただくために」
「嘘つかなくていいよ。竜崎はまだ僕をキラだと疑っている。そんな事くらいわかるさ」
「いいえ。月くんはキラではありません」
夜神 月と見つめあった。正確にはお互いの内部を探りあった。
変わったのだろうか。なにかが。彼と繋がれていた数ヶ月のあいだに、私のこころが。
繋ぎとめていた鎖が解かれた瞬間に、夜神 月のこころが。
「…竜崎は僕に僕がキラじゃないといって」
カクンと小首を傾げて夜神 月は嘲るみたいに言い捨てた。
「ゆるしを請うことで僕との関係を継続し」
あいしていると切なくなんども囁いたおなじ唇で。
「僕を繋ぎとめようとしている。鎖のかわりに愛情で?それは無理だよ」
僕はもう自由だ。
僕はオマエに勝ったんだL。
ああ夜神 月。やはりおまえはキラだ。
私は激しく爪を噛んだ。



「大丈夫だ竜崎。手錠が外れても僕は捜査本部にのこる。オマエといっしょにキラを追い続ける。決着がつくまでは」
「…はい。お願いします」
「だけどもう一緒には眠らない。キスもしない。セックスもしない。オマエの好きにはさせない。
僕はもう自由なんだからね」
「月くんは私を愛していると言いました」
「いまも愛してるよ?」
「私も愛しています」
空々しい笑顔。偽りの囁き。夜神 月は変わった。なんて哀しい。
かなしいと感じる私も変わった。
なにもかも変わってしまった。彼も。私も。箱庭から解き放たれた時間も。世界も。
決着のときが迫っていた。
冷たい床のうえで意味を為さなくなった手錠が、鈍く光った。



決着がつくそのときまではせいぜい側にいてやるよ。僕に殺されて嬉しいだろう?
L。オマエが愛した夜神 月も。キラも。僕も。
みんなおなじなんだよ竜崎。ぼくもあいしてる。