「Lunar Kyrie」 管理人 さおみ 様より
サイト二周年記念フリー絵を頂戴致しました。相変わらずゴージャス!精巧!美麗!
イメージss添付推奨(笑)とのことで、安心して好き勝手やらかせて頂きました。あー設定作るの楽しかった。
拝見した瞬間、思ったコトは「映画のワンシーンみたいだわ〜」です。
L月照もナチュラル?な雰囲気に感じたので、パラレルで、ドキドキワクワク楽しそうな物語がイラストから浮かびました。
いかんせん設定の骨組みだけで力尽きましたけど…(…)
ステキな萌えをありがとうございますさおみ様vvこれからもサイト運営頑張ってください!




車や鉄道は、そこに路があるかぎり縦横無尽にひた走る。
海があれば船が渡り、空があれば飛行機が飛び、宇宙からは人工衛星がテロリストを監視し、
パソコンや携帯、目に見えない様々な電波が空間をただよい氾濫を起こしながらも
人とひとを、世界と世界を、否応なく密接に結びつけている。
現代この世の中で、「誰も訪れた事のない場所」「誰も見たことのないモノ」そして「誰も知らない秘密」など
ありえない、と。
誰しもそう笑うだろう。明るい電子光に照らされた、白々しく空虚な笑顔で。
「まあそう考える人間は、それでいいと思いますよ。
わざわざ教えてやる必要もないでしょう。秘密は、共有する人間が少なければ少ないほど価値が上がりますしね。
私はただ知りたいだけです。そこに謎があれば暴くだけ。闇に隠された真実があれば解き放つだけ。
それをその後、どうするかは、貴方がたにお任せしますので」
そう淡々と嘯いたのは竜崎という名の男。
その道では有名な探険家…などと綺麗な職業には到底収まりきれない、獣のごとく貪欲に「秘密」を「謎」を「宝」を、
獰猛までに探し求める、
いわゆるトレジャーハンターのひとりである。
瞬きの少ない両眼は黒々とした隈で縁どられ、独特の背中を曲げた姿勢、常に爪を齧っている悪癖、
ひとを小馬鹿にした態度、なのにそこに居るだけで気圧される雰囲気。
年齢も本名も出身も不明。見た目からは比較的若く伺えるが、知識も経験も実績も半端ではない。
謎を追求する本人が、なにもかも謎に包まれている。
そんな竜崎のことを魅上はこのうえなく苦手に感じていたが、
しかし、今回の仕事に、この一癖もふた癖もある男の協力は必要不可欠なのだ。
魅力は、竜崎とは似て非なる立場の人間であった。
優秀な頭脳をもつ彼は文化人類学者であり、二十代後半ですでに周囲からは、いずれ学会を率いる立場に上りつめる
だろうと目され、期待もされている。専門は考古学だが民族学も研究対象とし、フィールドワークにも余念がない。
さらに優れているのは頭だけでなく、ひとも羨むノーブルで端整な容姿、生真面目で勤勉で常識的な性格。
竜崎とはまるで対照的なだけにソリが合わないのは当然だ。が、ビジネスに性格は関係ない。
ある原住民族の村でのフィールドワーク中、魅上は興味を惹かれる貴重な情報を手に入れた。
村の長老たちが語るその言い伝え自体は、まるで伝説じみていて信憑性も現実味も薄かったが、ソレを調べることに
よって、新たな原住民族との交流が期待できるかもしれない。
だが、計画には常ならぬ危険が伴った。
謎に満ちた言い伝えは少なからず不気味な、かつ不穏な気配を孕んでいたため、万一の事態にそなえて用心棒がてら
アクシデントやトラブル対応にも慣れている、腕利きのトレジャーハンターすなわち竜崎を雇い、
同行することに決まったのである。
いわく摩訶不可思議な伝承とは。
───密林の道なき道を進むと、突然あらわれる洞窟を入口とした、巨大な地下都市がある。
    住民は滅多に表には出ない。狩りも耕作もしない。なぜなら、彼らは互いを食料とし
    人肉を喰らいあい、血を啜りあい、細々と生きながらえている純血種族だから。
    なぜ彼らは死に絶えないのか。
    その答えは、彼らの先祖代々から伝わる、秘められし不老不死のまじないにあるらしい………
「カニバリズムというのはさほど珍しい習慣とも思えないのですが」
無造作に口に投げ入れたキャンディーをバリバリ租借して、男はつぶやく。
竜崎は酒もタバコも嗜まない。代わりにひたすら甘味を摂取しつづける、めっぽう変わったスウィートジャンキーだ。
「不老不死の方は、古今東西多くの人間が求めてきた至宝の謎ですから。俄然意欲が湧きますね」
「そのあたりの言い伝えは、どうせ法螺話に決まっている。あまり期待しない方がいい」
水を差すみたいに魅上が吐き捨てた。
「目的はあくまで学術的調査にある。あまり横道に逸れないで欲しい。
それに人は、生まれた瞬間から必ず死に向かっている。死は、生物すべてに与えられた試練であると同時に、
神からの恩恵でもあるだろう。
不老不死なんてモノはありえない。そんな自然の摂理に反するモノを求める人間は、ロクな死に方をしないと思うが?」
「どうぞご自由に。他人がどう考えようと勝手だと私は言いました。
契約した以上、仕事はキチンと果たしますよ」
とぼけた無表情で、竜崎は慇懃無礼に揶揄する。
「魅上さんが、信仰する宗教をお持ちだとは意外ですね」
「特定の宗教団体には所属していない」
からかうみたいな竜崎のセリフにイラっとした。べつに聖人君子ぶるつもりもなかったが、不老不死という「宝」への
露骨な興味と執着は、傍から見ていて気分の良いものではなかったので。
「碌な死に方をしない自覚はあります。むしろ本望です」
竜崎は口角を吊り上げた。
ニヤリと歪んだ顔に、笑ったのだと分かった。
「でも不老不死ですから、手に入れたら死なないんじゃないですか?」
これ以上、この男と話していても無駄だと、魅上は席を立った。


計画どおりか。計画外か。はたまた巡りめぐる運命だったのか。
現地での調査は、絶望的展開を迎えた。
十数人の専門家で構成したチームは、ジャングルを進むうちに正体不明の熱病に襲われる。
つぎつぎ病に倒れるメンバーたち。周囲に救助を依頼できる原住民族も村もなく、どうしてか装備してきた
緊急用連絡機器もいっさい使用不可となる徹底ぶり。
進退きわまり、チームは立ち往生した。まるで呪われた様な最悪な状況だった。
この現代において。たとえどんな秘境でも、対処可能なはずの最先端の知識と技術と機材をそなえた自分たちが、
こんな誰も知らない、ほかに誰もいない場所で、誰にも知られず死んでいくなんて。
信じられなくても現実は現実だ。
話しあいの末、動けなくなったメンバーを装備と食料ごとその場に残し、唯一熱病に冒されなかった魅上と竜崎だけが
とにかく先に進むことに決定した。
望みは、この先にある、かもしれない、地下都市とその先住民たちだけだ。
言い伝えは話半分にしろ、もしこの密林の先に村が存在していれば、チームの助かる確率は上がる。
竜崎が先に立ち、その後ろを魅上が、生い茂る樹木のあいだを掻きわけて黙々とひたすら進行する。
歩けど歩けど、おなじ景色。覆い被さる緑の波。襲いくる熱と湿気。額から流れた汗が目に入り視界がぼやける。
頭がクラクラする。息が荒い。
とっくに磁石も感覚もイカレている。
朦朧とした意識で一歩、足を踏みだして、地面がないのに気づくのが遅れた。
落ちる、と思い、寸でのところで肩を掴まれ乱暴に引き戻された。
たすかった。
振り仰ぐと竜崎が黒々と剥きだし気味の両眼で、魅上を素通りした先に目を凝らしている。
ゾッと底冷えするような歓喜の表情。
魅上も振りかえる。
そこに、巨大な洞窟がパックリ口をあけていた。
捜し求めた地下都市だった。


頼りない光を放つペンライトを片手に、住民どころか生物一匹見つからない、ゴツゴツした岩の狭い迷路を
竜崎は躊躇いも迷いもせずに突き進んだ。
そのあとを魅上が必死に追いかける。
竜崎の湾曲した猫背は、まさにこの為だったんじゃないかと思うくらい天井の低い通路移動に適していて、
上背のある魅上は膝と腰を屈め付いていくのがやっとだった。
少しは気を遣ってくれ。
「なぜ、迷わないんだ」
「この手の地下都市の造りには共通点があります。
どこに通気口があり、どこに明り取りの穴があり、どこに食料やアルコール貯蔵庫があるか。大体の間取りを把握すれば、
壁画等からもどの辺りに先住民の集会場所があるのか、おおよそ見当がつく。
まずは住民の一番集まりそうな所に行ってみましょう。そこに誰も居なければ、残念ながらこの地下都市はおそらく無人です」
「………分かった」
学者である自分よりよほど実地に詳しい男の的確な判断。
反論する余地もなく、魅上は押し黙った。
内部空間は、支える柱と壁によって細々区切られてはいたものの、かなり広い。よくこれほどの大規模な地下施設を
造りあげたものだと、疲労した頭の片隅で感心する。
それからどれほど歩いただろうか。
外気の熱や湿気は遮断され、ヒンヤリした空気に包まれた、それまでには見かけ無かった大きな広場へと
二人はやっと、辿りついた。
「ここが中心になる集会場のようです…が…」
「やはり誰もいない…か」
「───誰?」
「!」
いや。否。
突如かけられた透明な声にギクリと振り向いた。
とっさに腰の銃に伸ばされた魅上の手が、止まった。
「………っっ」
同じく隣で固まっていた竜崎が、大きく息を呑む。
妖艶に微笑んでいる。こちらを見つめ、誘うみたいに、薄暗い寂れた世界に、星の如く煌く琥珀色の瞳。
そこだけが淡い光を放っていた。彼のましろい肌が、蜂蜜色の髪が、視線が、キラキラ輝きを凝縮させた宝石に見える。
まさに秘宝。
ひとりだけ、いた。
幻のように美しいひとが。


男たちの呪縛が解けたのは、ずいぶん経ってからだった。
「貴方、は」
「僕?月って呼ばれてたけど」
「人間では…ありませんね貴方は。
一体いつからここに居るのですか?閉じ込められているのですか?
貴方を捕らえた、この地下都市に住んでいた住人たちは、どうしたのですか?」
竜崎の矢継早に捲くしたてる質問にも、そのひとは嬉しそうに答えている。
「さあ…僕は気がついたらココに居た…かな。
目が覚めたら周りに人間がいっぱい居て、僕をココに入れたんだ。
大人しくしててくれって頼まれて、別に待遇は悪くなかったし、不満もなかったし、楽しかったんだけど。
いつの間にか皆いなくなっちゃったな」
「それは…」
檻のような柵に囲まれてはいるものの、味気ない岩肌のみの地下都市全体に比べれば、ずいぶん飾り立てられた
豪奢な一角で。
華やかな装飾品と精緻に織られた薄布に身を包み、月と名乗った彼は退屈だった、と笑った。
興味深げに会話する竜崎の後方で、またしても信じがたい目の前の現実に、魅上は動揺を隠しきれない。
人間ではない存在。有り得るのか。
月の話の内容を総合し推測すると、ここに暮らしていた先住民族たちはかなり高度な呪術を習得していたらしく
(有り得ないと否定したところで、こうして月が居る以上は認めざるを得ない)
そのまじないによって、この場に呼びだされ囚われた人外の奇跡。それが、月。
住民たちによって神と崇め奉られ、大切にされ、彼らが居なくなってなおこの場に留まっていた
寂しいさみしい、不老不死のイキモノ。
「では、伝承の不老不死とは、月くんに関係があったのですね」
「ん。僕をあげると、みんな喜んでくれた。オマエたちも僕が欲しい?」
「───」
月の肉や体液を一度でも口にすると、人間は不老不死に近くなるという。ただし正確には細胞が異常に活性化し
衰えにくくなるだけなので、致命的な傷を負えば死に至るし、食物を摂取しなければ餓死もする。
しかも、細胞の変化後は肉体が普通の食べものを一切受けつけなくなる。よって、月を喰わなければ死んでしまう。
「そこからカニバリズムの言い伝えが生まれたのか…」
「なるほど。食料が月くん一人なら、地下都市から出る必要もない。
外に出なければ外敵に襲われる危険も減るので、より命は護られる」
「それに、ここは呪いによって、部外者はそう簡単に入り込めなくなっているらしいよ。
オマエたちは運が良かったんだ」
運が良かったのか。運命なのか。
まさに月は神だ。魅上は思った。この閉ざされた世界を護る、ただひとりの神。
けれどその身をその恩恵を一度でも口にしたら、二度と元には戻れない。自分たちも人外のモノに堕ちるのだ。
ソレはどんな麻薬より余程タチの悪い誘惑。まるで媚薬。
誘惑に、流されてはならない。禁断の実を、そうと知って食べてはいけない。
拳を固くにぎり奥歯を食いしばって理性を保つ男を嘲笑うかの素早さで
もうひとりの男は、アッサリ禁じられた果実に貪りついた。


竜崎が、月を抱いた。
月の唾液を体液を飲み干し、交わりながら月の肉を喰いちぎる。滴る赤くあまい血液ごと嚥下した。
貫かれ獣みたいに犯され喰われながら、月はしあわせそうに笑っていた。穏やかに慈愛に満ちた双眸で微笑んでいた。
目の当たりにした魅上は、愕然としたまま言葉もない。
立ち尽くす魅上にむかって竜崎と月は、一対の番のように寄り添いあう。
「竜崎は、もう僕から離れられないな」
「私は月くんと生きていきます」
「オマエ、は…!
そこまでして不老不死を得たかったのか!竜崎!キサマは人間としての尊厳すら捨てたのか!」
「違いますよ。不老不死なんてどうでもいいです。生きるも死ぬも、関係ない。
ただ私は、月くんと一緒に居たいだけです。ひとである事を捨てても、これから先ずっと、月くんの側に居たい」
ただ、このうつくしい存在と。永遠に共にありたいだけ。ふたりきり、愛しあいながら「生きて」いきたいだけ。
何によるモノかも曖昧なまま、受けたあまりのショックに小刻みに震える魅上へと、
「素直になれない貴方は可哀想ですね」
見透かすセリフを最後に、竜崎は魅上という元ビジネスパートナーをも、無情に完全に切り捨てた。
代わりに月が少しだけ困った顔をして言った。
「帰りなよ魅上。もう二度と、会わない。
前にも説明したけど、この場所は滅多なことじゃ『外』と通じないんだ。だからオマエが二度とココに来ることもなければ、
僕たちに会うこともない。
悪夢を見たと思って忘れろ。それが一番いい」
神に憐れまれ、神に厳かに告げられ、
それが出来るならばどんなに良いか。
魅上は竜崎とはちがう。生真面目で勤勉で常識的な性格。祖国の日本には残してきた恋人も家族もいる。
魅上を待っている人たち、研究者仲間、仕事も、立場も、夢も、未来も、人としての倫理だって、
そうだジャングルに置いてきたチームは。彼らをどうするんだ。見殺しにするのか。
「皆そうだよ。人間はみんなそうだ」
ちいさな月の呟きが聞こえる。
「ここに居た人間たちもそうだった。最初は、僕を手に入れて満足する。だけどそのうち耐え切れなくなるんだ。
いつ果てるともしれない命を持て余して、苦悩して、気が狂うヤツラが殆どだった。
僕に身も心も捧げると言った女は、僕を独占できない嫉妬で他人を巻き添えに憤死した。
僕を心から愛してると言った男は、その僕の肉を喰らって生きる自分への嫌悪に、飢えて死んでいった。
僕は何も失くさない。だけど、人間は僕を得て、すべてを喪ったと誤解する。僕のせいだと。
僕は与えているだけなのに人間は奪われたと思い込む。そうやってみんな死んで、最期は僕ひとりだけになるんだ。
さみしいね」
グラリと心が揺れた。
そのとき魅上の冷静な頭脳がひらめき、真実を弾きだす。
言葉をつむぐ月の淡く色づいた唇。すんなり傾げられた頚。無邪気にすら感じる視線ひとつが。
強烈な色香を纏い、誘っているのだ。
こちらにおいで、と。
彼は魔物。彼は悪神。
現代この世の中で、人間の知らない「謎」も「秘密」も「恐怖」も「歓び」すらも、すべてがこの地下世界に閉じ込められて
いたのだと。禁忌は危険すぎるがゆえに、蓋をされ、隠されていたのだと。
月をめがけて急速に傾倒する自分のこころを自覚し、畏怖と戦慄とともに思い知った。
己が無知だったのだ。そして竜崎はとっくに気がついていた真実。
「私はここにいますよ月くん。絶対に貴方から離れません」
「ありがとう竜崎。だけどオマエ、逆にちょっとウザイんだよね。
他の人間たちに比べて大分変わってるみたいだし、竜崎とずっと一緒にいたら、僕の方がイヤになりそうかな」
「酷いですね」
クスクス笑いあって、月が魅上を見る。とたん竜崎の顔が不機嫌に歪んだ。
「月くん」
「アレも欲しい」
ふたつの琥珀が瞬間、ルビーに変化する。
深紅の妖光が輝き、目を奪われた魅上は酩酊する。強烈に惹きつけられる。
どこかで静止をかける声がしていたが、勝手に動きだした肉体は止まらない。
止める気も起きなかった。
それが月に暴かれた自分の欲望と本心だと、分かっていた。
泥沼の悦楽のなかで虚ろに思う。竜崎も、この魔物に誑かされたのか。いや違う。あの男は自らこの歓びに溺れた。
欲しいモノだけを獣のごとく貪欲に獰猛に探し求めた男は、欲しいモノを掌に掴むためなら、己の命すら構わない潔さがあった。
自分、は。
このまま流されるまま狂気に染まり、絶望の淵に沈むのか。
もう戻れないだろう。甘いあまい禁断の果実。その身は柔らかく熟れ、猛る自身を突き刺せば溢れる赤と白の果汁。
自分の名を呼んで細く長く響く嬌声と、肩にすがりつく白い手。包みこむ熱い内襞。搾り取られる快感。
絶頂に至る一瞬、
神に求められ、施され、認められ肯定された気がした。
魂が解放される。自由になる。人間が持つしがらみから放たれ、自分はここにいる。
ソレは不思議な感覚だった。眼が醒めるみたいに、世界が生まれ変わったのだ。
魅上は確信した。もう戻れないだろう。
けれども。
自分は永遠に、後悔もしないだろう。


「満足ですか?」
「まあね」
不快全開状態にいるらしい竜崎を、あやすみたいに宥めつつ月は、膝のうえで瞼を閉じた魅上の髪を優しく梳いている。
竜崎の怒りは月には向かわない。男の悋気が、もうひとりの男を嬲り殺してしまわないよう、
月は背中を丸めて拗ねている竜崎を抱き寄せると囁いた。
「オマエも魅上も、同じくらい気に入ったよ?ふたりが一緒に居てくれれば、しばらく退屈しないで済みそうだ」
身の破滅をまるで恐れず、本能のまま月を求める竜崎と。
逃れたくても叶わず、どうしようもなく月に惹かれる魅上と。
まるで対照的な男たちが正反対に月を求める姿を前にして、
「バランスも取れて丁度良いじゃないか。
いつか殺しあうなり、自滅しあうなり、飽きたら好きにさせてやるよ。
でもそれまでは僕の側にいて、僕を楽しませて、僕を退屈にしないで、ひとりにしないで」
爪が剥がれ血が流れても無言で指を噛み続けている男に、愛おしそうに、キスを送った。


パンドラの箱を開けるのはいつだって好奇心だ。
後悔はしない。欲しかった謎と宝を手に入れたなら、あとは己が箱に入り、蓋を閉めてしまえばいい。
そうすれば誰にも伝わらない。誰も知らない秘密。
永久に、幸福に、美しい神と、ふたりの男は。


「treasure hunters」