「Lunar Kyrie」 管理人 さおみ 様より
メリクリフリーイラストを頂戴しました。ありがとうございました!
…すみませんすみませんすみません…
さおみ様の素敵絵は完全無欠の照月ですが、このあとに続く私のssはかなり
微 妙 …
です。そして竜崎さんはご存命で三角関係です。しかもよく考えたら初照だ。きゃ。(きゃじゃない)
真剣に照月お好きな方はさおみ様の素敵絵まででストップしておいてください。
ホントすみません…。

人通りの絶えない街。道路沿いにつづく街路樹には今年流行のブルーイルミネーション。
立ち並ぶビル群。煌々と明かりの洩れるガラス戸の前は、待ちあわせの恰好の場所でもある。
着飾った男女がソワソワと、巻き髪の具合を気にしながら、ネクタイの結び目を気にしながら、
腕時計で時間を確かめつつ、それぞれのお相手の登場を待ちかね、それぞれの聖なる夜を待ちわびる。
そんな中。某有名店前。毎年飾られる巨大ツリーの電飾のまえで。
黒いコートに身を包んだ長身の男は、いくつかのプレゼントらしいパッケージが施された箱を小脇にかかえ、
浮ついた雰囲気もなく、スラリと背筋を伸ばし、微動だにせず、冷静に沈着に整然とした立ち姿を崩さない。
ビルに掲示されている時計が午後七時を指した。
───ゲシッ!
効果音とともに、背後から魅上の膝裏に蹴りがはいって、
マネキンのように微動だにしなかった男は盛大に前につんのめった。
「…なにボーッと突っ立ってるんだ」
振り返れば不機嫌な顔をした、魅上の神。魅上の恋人ではない。スーツ姿の綺麗な顔をした男である。
夜神 月である。キラである。つまりは神である。
「お待たせしました神」
「待たせたのは僕だー!」
顔をあわせた途端の見事なボケツッコミに、月は早速ウンザリした。
どうして僕の周りってこういう男しかいないんだろう…。
「待ち合わせは六時の約束だろう。どうして一時間も遅れてるのに、そこをリアクションしないんだ。
そもそもその前に電話してくるとか、メールしてみるとか、なんで何もしないでボーッと待って」
「つまり神は、ボーッと待ち惚けを喰らっている私を、ボーッと観察されていた訳ですか」
薄っすら、シニカルともいえる笑みを浮かべた魅上の貌は女からみれば相当に魅力的だろう。
しかし月は秀麗な眉をゆがめた。魅上の、笑ってはいない目が非常に不愉快だ。
この僕を見透かすとはいい度胸じゃないか。魅上のくせに。
あーもーホントむかつく。どうして僕の周りってこういう男しか…
「行きましょうか」
サラリと言葉と同時に腰を抱かれ、あっという間に月はエスコートされた。…この辺はヤツとは違うな。
魅上は世間一般定番どおりのマナーや女の扱いには慣れていて、ただ月は、男だ。
グサグサ突き刺さる視線が痛いと、月は半眼でおもった。やはりここはもういちど魅上を蹴り倒すべきだろうか。
衆人環視のなか、男が男の腰を抱いてリードすることに対する後ろめたさや世間様への気遣いは
この男「にも」皆無らしい。
おいおいおいオマエ検事だろう。ルール常識モラル体制その他もろもろを遵守すべき立場の人間だろう。
いいのかそれで。
いいはずがない。
どうして僕の周りって…。
「ご希望は和食という事でしたので、店は私が適当に選びました。
ここから歩いてすぐなのですが、このまま向かっても宜しいですか?」
耳元で囁かれてハッと我に返った。誰かと会っているときに、相手に他の誰かのことを想われていたら
どんな人間だって不快におもうんじゃないか?
月は、魅上の腕のなかで、ずっとホテルに置いてきぼりにしてきた情けない猫背の恋人のことばかり思い出す。
魅上と比較しては竜崎を思い出し、結局、今もこころは竜崎のそばにいる。
「ソレ、僕へのプレゼントか?」
視界に入ったモノに咄嗟に話題をふった。
「はい。神がなにを喜ばれるか分からなかったので、目ぼしい品をいくつか」
魅上が持っている、いかにもブランド物らしい金色やらブルーやらのリボンで包装された箱を横目に、月は鼻で哂った。
「僕が欲しいモノなんてひとつしかないだろう」
「確かに」
「それが何か知ってるの?」
「神が求める理想の世界ならば」
「魅上はさ」
フ、と月は酷薄に口角をあげた。
アルカイックスマイル。魅上はおもう。下賎をすくう、高貴な存在のほほえみ。
「僕が呼び出したら、どんな時でも飛んで来るんだ。…イブの夜でも」
「無論です。クリスマスなど私には関係ありません」
「でも魅上なら、イブを一緒に過ごす女くらい幾らでもいそうだよね」
「居ないこともありませんが」
「今日の呼び出しがキラとは関係無い、すごく下らない僕の私的な都合だって事は、なんとなく分かってただろ?」
「神に必要とされるのですから」
「ふうん。…それでいいんだ…」
片目を眇め、神はつぶやく。スルリと腕の中から逃げだした。
「たとえば僕がどんな理由で今晩オマエを呼び出したかとか、僕が今どんな気分でいるかとか、
そういうのは全然考えないんだね」
「すべては貴方の召すままに」
「魅上はさ。神が好きなんだよね。キラが好きなんだよね。僕が好きなんじゃないよね」
「貴方が神です」
「…だから僕はオマエじゃ駄目なんだよ」
クルリとふりむいた月は魅上の目を見据えて、そう吐き捨てる。
見くだす瞳。侮蔑の表情。嘲りと憤りと哀しみと。
こんなに似ているのに。あの男とこの男のキラに対する執着はおなじくらいの重力で、月をひきつけ、束縛し、
離さないのに。
───月くんがキラであって欲しかった。
───あなたが神か。
その決定的な違い。
「どっちにしても本当に、オマエらってうざい」
立ち止まっていた長い脚が、またスタスタと歩きだした。どうやら帰る気はないらしい。
魅上は静かに首を傾げた。それから月の後を追いかける。
さきほど待ち惚けを喰らっているあいだ、魅上の死神の両眼は、向かい側のビルのガラス越し、カフェの窓際の席に
ひとりで座ってジッとこちらを見つめる月の視線を、きちんと捉えていた。
たったひとり。寂しそうに。哀しそうに。孤独に。
何があったかは知らない。神の神聖なる精神の領域を、無闇に自分ごときが詮索すべきではないだろう。それは神の
逆鱗に触れることになるだろうし、築き上げてきた信頼関係を壊す結果ともなりかねない。
だが。神にあんな貌をさせる男などは、この世のどの悪人よりも悪だ。実際さっさと殺してしまった方がいい。
すなわち削除。
じきに消してやる。貴様など。
月は神だ。魅上にとっての唯一の存在。唯一の存在である神が、夜神 月。
今しばらくは、月は魅上の絶対神であり続けるだろう。新世界が創世されるその時までは、なんびとたりとも神の気を
煩わすことは許されない。
でも月は知らない。わかっていない。
人間は、総じて男は、神と呼ばれ崇め奉られる存在にほど惹かれ、ひきずり落ろし、穢し、
自分の腕に堕落させる欲望をもつ生物であることを。
でなければ誰がわざわざ、痴話喧嘩のとばっちりを買いにイブの夜に、ノコノコ出かけて来るものか。
月からの誘いの電話を切った瞬間、約束していた女には速攻断りの連絡をいれ、キイキイ喚く携帯の電源をすみやかに
落とし、勝負スーツとコートをクローゼットから引っ張りだし、念入りに身支度したあとは店を梯子してプレゼントの用意をし、
行きつけの旨い和食屋に個室をキープし、ホテルのスウィートに当日予約を無理矢理ねじこむような苦労を
誰 が す る も の か !!
ちなみにホテルの部屋には薔薇の花束もホールケーキもシャンパンもイチゴも指輪もすべて揃っている。
魅上 照───神であるキラに認められた男。
神の為、目的の為ならば時間と労力をいっさい惜しまない男。
抜かりは、ない。
「………で。魅上。その予約してある店って、どっち?」
しばらくして、行先に迷ったらしい月が視線も合わせず尋ねてきたのに、バレない様ほくそ笑むと。
魅上はふたたび月の細腰に腕をまわし、恭しくエスコートを開始した。
「secret
lover」