キラを捕まえた。
夜神 月を私のものにした。
そのとき。ノートを奪われ死神を奪われた夜神 月にはもはや為す術もなかった。
ギラギラと怒りに輝く瞳でただ私を睨みつけていた。
両腕をうしろ手に縛めてその場に膝まづかせ、柔らかな薄茶の髪をわし掴む。仰のかせた。
貴方がキラです。これから貴方を死刑台に送ります。そういうと彼はゆっくり微笑した。
殺気も、憎悪も、嫌忌の表情もそのままに力強いまなざしで私を射抜いた。朱に色づいた唇の端を傲慢なほど
引き上げてみせた。
たまらなく愛おしい。私のキラ。私の夜神 月。
彼のその強靭な精神。賢くも愚かな頭脳。うつくしい肉体。稀有な存在。なにもかもが。
ずっと欲しかった。
キラは死刑台に送られなかった。キラを捕まえた報酬として夜神 月は私が世界から貰い受けた。
キラとしての名誉ある死を赦されなかった彼は、社会的に抹殺され、二度と人前にも出られないように、
ノートに名を記せないように両腕を、肩から。
私から逃げられないように両足を、膝から。
施術後に麻酔から目覚めた彼の、長くながく尾をひく絶叫に、
こころがふるえた。ウットリと陶酔した。
それから彼のために特注で作らせた、飾り彫りの入ったチタンの黒い首輪は、彼の白い肌にとてもよく似合った。
首輪から伸びる鎖で繋がれたベッドの上だけが、彼と私の棲むちいさな世界。
人ですらなくなった夜神 月は、私を受けいれる為だけの存在になる。
「いっ…あっあっ…あ」
私たちのちいさな世界では昼も夜もない。
私はLとしてキラ事件を解決した、おおきな仕事をやり遂げたあとの休息を、死ぬまで取ることに既に決めていた。
そうすれば時間も何も関係なく、ずっと彼と遊んでいられる。
「此処、を」
「うあっ」
「切り落としても良かったのですが…でもまだ面白くないですよね…感じている貴方を見るのも愉しいので」
「うっうっ…あっ」
「ああまた勃ってきましたね。でももう出ないでしょう?そんなに気持ち良いですか?」
もう数えきれないくらい吐精している彼の男性器は、それでも身体のなかに埋めこまれ振動しつづける玩具に
神経を刺激されて、無理矢理、ふたたび持ち上げられようとしていた。
此処を、といってザラリと舌で裏筋を舐めると、ビクビクふるえる。可愛らしい彼自身。切り落としても良いとは
言ったが実は当分その気はなかった。
彼の零す白い体液を味わえなくなるのは、随分とつまらない。
もっとも今ではだいぶ、その味も量も薄く少なくなってしまったが。
搾り取り過ぎているという自覚はある。
「ああっあああっ…ひあっ」
性玩具のコントローラーを操作するたび、目の前の肉体が背筋だけで跳ね上がった。
手足を失った夜神 月は、私の為すがままだった。
鎖で拘束されたベッドのうえに達磨のようにゴロリと寝かされ、逃げることも抵抗することも出来ず、
ただひたすら私に抱かれるしか選択肢はなかった。
彼の細く優美な両手と両足も、私はとても好んでいたが、
無くなってみたところで彼のうつくしさは微塵も損なわれていない。
むしろ造形的には余分なパーツを取り除かれ、よりシンプルに、夜神 月はますます綺麗になっていく。
私のたいせつな夜神 月。手足と一緒にゴソリと彼の頑固な意地も捥ぎとった。いまの彼には私を拒絶できるほどの
強さはない。
衝撃と恐怖に挫けた彼の精神は、逆に彼の命を救っている。
私は嬉しくてうれしくて愉しくてたまらない。夜神 月は私の腕のなかで自分が変わっていくことは恐怖だろうか。
私が彼を変えていくのだ。
「んああっ…っ」
コードをひっぱり卑猥に蠕動していた玩具を引きずり出した途端、緩慢な痙攣とともに彼は達したらしい。
タラリと透明な樹液がほんの少し茎から溢れたが、反応はそれだけだった。
虚空にむけられたうつろな瞳。それでも薄茶色のそれは宝石のように無機質に煌き、紅い唇の端から垂れた唾液は、
花の蜜の如くに私を誘う。
ベロリと秀麗な貌をひと舐めしたがやはり反応はなかった。ヒクヒクと痙攣を繰り返しているのも生理的なものだろう。
当初。夜神 月とのセックスの際には、かならず薬と猿轡をつかった。抵抗できなくても発作的に舌を噛もうとして
いた彼は、そのうちその気力も体力も失ったので、猿轡は不要になった。
口を封じてしまうと彼の啼き声が愉しめないのでつまらない。
薬はいまでも使用している。安定剤も兼ねる成分で、夜神 月は行為の最中、ラクに意識をとばすことが出来ている
はずだ。
だから彼は狂うことができない。
たとえ狂ってしまったとしても私は彼が愛おしい。
茫然自失している彼の柳腰を、胡坐をかいた膝に乗せると、
嗚呼。邪魔な両脚がないと挿入もとても楽なのだ。
なんてすばらしい。
いっきに蕩けた花弁を貫いた。
「………っっ!」
スイッチの入った玩具みたいに彼の身体がガクガク揺れた。
彼の内部は熱い。狭く、うねり、包みこみ私を搾りあげる。俗にいう名器だろう。夢中になって内壁を擦りあげる。
彼のなかに押し入り彼のなかにいると、この私を淫らに呑みこむ蕾と心地よい襞さえあれば、他には何も要らないと
すら思えてくる。
もっともっとシンプルに綺麗にしたい。
他には要らないものを彼から削ぎ落として。
やはりいずれは彼の性器を切り落としてもいい。ぬめる舌を切り落としてもいい。言葉は喋れなくても声は出るの
だから、彼の酩酊するみたいに艶やかな嬌声は聴く事ができる。
空っぽになった口内にはきっと大量の私の精液が注げるだろう。
そうやって私が彼を美しく変えていくのだ。
「はっ…あ…は…っ…」
シーツの上で衣擦れの音のみを立てていた夜神 月の咽喉から、またあえかな吐息が洩れはじめる。
薬の効果だけではなく、穿たれれば悦びを感じるように彼を作り変えたのも私。
「ん…っふ…うんっん」
「まだきもちいいですか。こんなに私を咥え込んで。本当に淫乱ですね」
「ん、ん、…んん、んんっ」
「私に変えられるのは怖いでしょう月くん」
哂いながらひとつひとつ。突き刺した肉棒で容赦なく掻き回しながら、聞いているのかいないのかわからない耳元で、
丁寧に事細かに、私の計画を説明した。
その都度、彼の内部はビクビクと引き攣ったのでおそらく聞こえているだろう。
嗚呼たまらない。心地よい。愉しい。嬉しい。
愛おしい。
「目はどうしましょうか。私、月くんの薄茶の瞳がとても好きなんですよね。
このままでもいいですけど、取り出して薬につけて部屋に飾ってみても凄く素敵だとおもうんですよ」
「い…やっ…やっ…ひあっ…」
「美しい夜神 月。綺麗な月くん。私がもっともっともっと、きれいにしてあげます」
「………ふ…あっ…は、は、は」
───哂っている。
薬で蕩けているはずだった夜神 月の声が、嘲笑のそれに変化している事にすぐに気づいた。
のぞきこんだ両眼に確かな意思が戻っているのを見た。
微かな、艶笑。
「それより…もっと…たのしいことがあるよ、りゅうざき」
「───なんですか月くん」
「バラバラに、するんだ…きれいなにんぎょうは…メチャメチャにこわすの、が、たのしいんだよ…
…こどものとき、やらなかった…?」
大切なたいせつな宝物のお人形。
大事におもうあまり、反対にそれが壊れてしまった時のことを夢想すると、堪えきれない昏い悦びに襲われる。
「て…とか、あしだけじゃなくて…めも…みみも…くびも。…とると、たのしいよ…やってみなよ」
甘い囁き。
こなごなに砕いて、二度と元には戻せないくらい破壊して。
あんなに可愛かったのに、綺麗だったのに、うつくしかったのに。
喪失にそう泣きながらこころは異様な歓喜と興奮に満たされる。
ひとは、本当に失いたくないものほど自らの手で失ってしまう。それは本能のもつ咎。人間の性。禁断の欲求。
甘美な誘惑。
甘くあまく。夜神 月の輝く目が誘っている。
壊して。
私はカクンッと首を傾げた。
それこそ壊れた人形みたいに。
「なに言ってるんですか月くん。私、月くんを殺す気なんてまったくありませんよ?」
「………」
「あなたはこれからも私と一緒に生きるんです。
私の手厚い保護の下で、私に面倒をみられ、私に身体も心もすべて委ね、
美しく綺麗に生まれ変わりながら寿命をまっとうするまで何十年でもこうして私と共にずっと、ずっと、ずっと、
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと」
「…あ」
「愛してますよ月。永遠に遊んであげますからね」
「…あ…あ………あああああああああああああああああああああああああああああ!」
絶叫。
こころがふるえた。ウットリと陶酔した。
やはりなんど聴いても、彼の啼く声には酔い痴れるのだ。
愉しくて嬉しくて愛おしくて。
声をたてて哂いながら狂おしく腰をつかい彼を犯す。
殺してくれ、と泣き叫ぶ夜神 月が、今度こそ舌を噛まないように、
深くふかく口を塞ぎかわりに私が彼の舌を甘噛みした。