「ゼロ博」 管理人 藤 魔子 様より 
リクエストしてわざわざ甘々描いてもらいました。でも微妙なSSSつけてすみません…。
勝手に殺すんじゃねえと怒られそうですがまあこういうL月もアリにしておいてください。

ありがとうございました!





天国と地獄につづく門。あの世のいっぽ手前で、僕らは再会した。

黒装束の死神は一本道のどまんなかで、途方に暮れて佇む僕の顔をマジマジ見つめてから
「連れていくのはオマエの方じゃないな…」
意味のわからない不思議な呟きとともに、道のすこし先にそびえたつ大きな門を指し示した。
あそこを通ればあの世行き。
僕は戸惑って拒絶した。わけがわからないまま気がついたらここにいた。僕は死んだってコトになるのか?
殺されたのか?キラに?
記憶は鮮明だった。竜崎と一緒に火口を追いつめ、ヘリのなかで黒いノートを手にした。
瞬間、世界が暗転した。
だれかの哂い声をきいた。
力づくで押し潰された。
そうしていまここにいるのだ。僕はこれからどうなるのだろう。ソロリとうかがった死神の姿はとっくに掻き消えていて、
一本道とゴールの門以外はなにもない空間に、僕は独りきりだった。
そっと左手をもちあげてみる。常であれば軽い音を立てて纏わりついてくる手錠は、ない。
そのさきに鎖で繋がれていたいつも一緒だった男も。
不安で、心細くて、寂しくて。不安で心細くて寂しいのは自分が死んでしまったという認識からくるものか、それとも
もっと別の喪失感からくるものか。
その場にしゃがみこんだ。顔を埋めた腕、ましろい左手首には、馴染んだ擦過傷の痕さえまるで残っていない。
哀しいとおもった。僕はひとりなんだ。ひとりで逝かなきゃならないんだ。
ずっと。竜崎といっしょなのだと思っていたから。
生まれたときから逝くときまでずっとずっとずっと。竜崎と一緒なのだと、思い込んでいたから。
時間の流れはわからないまま、そうやってボンヤリ、いつまでも薄暗闇をながめていた。
ふと。
ぺタ…ぺタ…ぺタ………
聞き慣れた素足の足音がして、咄嗟にふりあおいだ。
見開かれた、でっぱった真っ黒な目が驚きの色を浮かべて、僕をのぞきこんでいる。
僕はとびあがった。
「竜崎」
「月くん」
名を呼びあって互いに呆気にとられる。それから口々に、でも言いたい事はおなじだろう。
なんで貴方がここにいるんですか。オマエこそどうして。
ひとしきり成立しない会話を交わしたあと、フウッと竜崎はため息をついた。
「お互いキラにやられましたね」
「そういう事になるんだろうね」
僕はキラの正体を知らない。何もわからないまま死んでしまったから。竜崎は、火口ではない真のキラを遂に見つけ
たんだろうか。そうして殺されてしまったんだろうか。
たずねると、複雑な表情をした。もういいですと言った。
「私は失敗しましたが、じきにキラも捕まり処刑台に送られるでしょう。彼がここに来るまでふたりで待ちますか。
キラと私たち三人であの世行きというのも悪くないですね」
「あ。それムリみたい」
僕は最初にきいた死神からの話を竜崎に説明する。ごくたまに、あの世には逝けない種類の人間がいて、死神は
そういうひとを連れていくために迎えにくること。
キラはたぶん、あの門をくぐってあの世には逝けないこと。
僕たちとおなじ世界にはいけないこと。
竜崎はひどく哀しそうな顔で僕をみた。切なさと労りと憤りと愛しさと哀しみ。
ごちゃまぜの感情を「そうですか」という呟きで胸に押さえ込んだみたいに、
それから僕の左手を握った。
「可哀想です」
「誰が?僕が?」
「月くんも…キラも」
キラはわからないけれど、キラに殺された僕が憐れだという竜崎のセリフの意味はよくわかる。
でもじつは僕はもう不幸ではなかった。
竜崎がそばにいるから。竜崎が一緒だから。僕の左手の先には竜崎。
僕らはこれからもずっと。
「結局、私たちは離れられない運命みたいですね」
「相手がキラじゃなくて僕なのが不服そうだな」
「いいえ。月くんと一緒ならたとえ天国でも地獄でも。どこまででもいきましょう」
くすぐったく幸せに笑った僕に、優しく哀しく微笑んで、竜崎は抱き締めて頬にキスしてきた。
僕は握られた掌をギュッと握りかえした。
ふたりで、眩い光をはなつ門に向かって、歩きだした。

「天国と地獄」