きっと目が覚めたらサンタクロースからのプレゼントが届いているよ。
「月くん。どうしました?」
「───
あ」
聞こえた声と同時に強く突き上げられて、腰から頭のてっぺんまで駆け抜けた電流に、感電したようにバチッと
意識が戻った。
「竜、崎」
「大丈夫ですか?少しの間、失神していたみたいですが」
「だ、いじょぶ…うあっ」
ちょっと待て。大丈夫じゃないだろう。心配する素振りをみせるなら、少しは手加減してくれないか。
「あっあ、ま、てっ…ゆっくり…っ」
「無理ですよ」
無情なセリフと共にいきなり激しい律動が再開される。どうやら行為の最中に気を失っていたらしいが、竜崎は
そのへん容赦なかった。
覚醒したとたんガクガクと上下に揺さぶられて、また気が遠くなる。弛緩した身体ではろくに抵抗できないのを
良いことに、奥の弱い部分を集中的に虐められ、グラインドのたびに咽喉から細い嬌声が洩れるのを
止められない。
「あうっ…んっ…ん、あ、あっああ」
首を振って逃れようとしたら頭を抱えこまれキスされた。
強引な前屈姿勢によって角度が変わり、余計に結合が深まり、あげた悲鳴は竜崎に吸いとられ、
かわりに混じりあった唾液を嚥下させられる。
舌を絡めあい、貪りあい、余すところなく犯されている感覚に全身が震えた。
竜崎の両肩に担がれた足先が宙を蹴る。縋りつくことも出来ず、必死でシーツを鷲掴んだ。そのまま再びユルユルと、
次第にギリギリまで引き抜かれては勢いよく貫かれ、掻き回され、
グズグズに熟れた内襞が伝えてくる快感の火花に気が狂いそうだ。
もっと、もっと、もっと。
目茶苦茶にして欲しい。壊れても構わないから。
「…っ…くっ…ふ」
呼吸が苦しくて、ひゅっと切羽詰って声なく喘ぎ、生理的な涙があふれた。そのとき。
不意に竜崎は動きを止めて唇を解放すると、マジマジ顔を覗きこんできた。
「!
…やっなん、で」
ちくしょう。この変態。さっき気絶したって事は、イク瞬間に悶絶したってことだな。
この調子で散々ネチっこく嬲られて我慢させられるから、いつもいつもいつも。これだから悪趣味なオヤジは!
「月くん」
目尻から頬を、竜崎の荒れた指先が愛しげに何度もなんどもなぞっていく。
その些細な動きにすら敏感に反応し、肌が粟立つ。
「先程も泣いてましたよね。哀しい夢でもみましたか?」
「はっ…あ?そんな、の」
覚えていない、それより早く、と言おうとして思い出した。
刹那にみた悪夢。
なんとか懸命に乱れた吐息を抑えて、言葉を搾りだした。繋がったままナカで脈打つ竜崎が酷く熱くて、ズクズク
疼いて、こんな話は後でいいじゃないかと思ったけれどいま伝えておく必要も感じていた。
「ヘンな、夢、だったよ。僕が、キラだった夢だ」
「───」
竜崎の表情が微かに変わる。他人には絶対に分からないだろう惚けた男の内心が、僕にだけは読める。
「僕がキラだった。僕の側に、竜崎は、いなかった。辛、かった」
「月くん」
「んんっ…ちょ、おいっ」
なんでデカくしてるんだオマエ!なに興奮してるんだ!
………なのに何故そんなに哀しそうなんだ。
「僕は、キラ、なんかじゃない、だろう?竜崎」
「ええ。貴方はキラではありません。
一時はキラだと疑われましたが、容疑は完全に晴れ、私と一緒にキラを捜し出し捕まえて、キラ事件は無事
解決しました。
もうずいぶん過去の話です」
そうだ。そのとおりだ。
僕は竜崎に、キラ最有力容疑者として監禁・監視までされたのだけれど、結局、一緒にキラ捜査協力をしていく
うちに自ら容疑を晴らすことに成功し、真のキラを逮捕し(逮捕直後に死亡してしまったのが悔やまれるが)
キラ事件は幕をおろした。
それが周知の事実だ。
ベッドの上で覆いかぶさって僕を凝視する竜崎の双眸は、剥きだし気味のドンヨリ虹彩のない、でも何もかもを
見透かし、真実をけして逃がさない探偵の眼。
そこに浮かぶ、労わるような、宥めるみたいな憐れみを含んだ、不思議な色。
どうしてあんな夢をみたかと説明するならば、キラと疑われた当時の不安が、僕のこころに残っているからだろう。
それを竜崎はいつでも心配し、気遣ってくれている。
僕がキラの件で二度と哀しまないように、傷つかないように。
僕の大切な友人であり恋人でありいまは唯一の家族でもある世界的名探偵は、その天才的頭脳を僕の些事のために
どれほど割いてくれているだろう。
「月くんが不安になる事はひとつもありません。
貴方はこれからもずっと私と一緒に、Lとして生きていくのです」
「ん。分かってるよ」
そう。
キラを掴まえたあと、ずっと竜崎と共に居ると。
家族とも友人とも祖国とも別れるとしても、見知らぬ異国の地ででも、竜崎のそばで過ごすと。
閉じ篭もった箱庭のなかで誰の目にも触れず、一生ふたりきりでも、後悔しないと。
告げた決意に、父さんもスンナリ了承してくれた。
まるで最初からそうなる結果と決まっていたかの如く。
「月くんはキラではありません。もう二度と貴方をキラにはさせません。
たとえデスノートがもう一冊、この世にあったとしても、私は命をかけてノートから月くんを守ってみせる」
「…デスノート?一体なんのことだ竜崎?」
「キラも、死神も、新世界も。すべて忘れてください。月くんは手放してください。
貴方の記憶と過去は、私がぜんぶ預かりますから。貴方の罪も嘆きも貴方の存在ごと、私が責任をもって
受けとめますから」
───
以前から感じてはいた。
竜崎は僕になにかを隠している。僕にはまるで憶えのない、僕自身の秘密を。
それが何なのかまったく分からないけれど、竜崎は今後もけして話さないだろうから、僕がソレを知る機会は永遠に、
ない。
多分とても大事な、死ぬまで、死んでも明かされない、
名探偵だけが抱える秘密の真実。
「終わったらケーキを食べましょうね月くん。生クリームとチョコレート、どっちが良いですか?」
「なんでいきなりケーキなんだ…」
「今日はクリスマスイブですよ。忘れましたか?前に約束したじゃないですか。
クリスマスと誕生日には、一緒にケーキを食べましょうって」
「そういえば…あっ…は、あ、ああっあう」
前ぶれなく再開された蹂躙に、待ち望んだ刺激におもわず背筋が反り返る。
両手で腰を掴まれ強引に体位を変えられたあと、シーツに這わされた背後から圧し掛かってくる男の重みと、
素肌の体温。
ソレだけで身体も、どこか不安定な精神も。充たされる気がするから不思議なんだ。
どんなに辛く哀しい秘密が真実が隠されていようとも、この温もりがある限りは。
「ねえ月くん。生クリームとチョコレート、どっちが良いですかあ?」
「んっな…ど、どっちでも…っ…いっあっあああっ」
「月くんが決めてくれないと私、どちらを食べたら良いのか困りますので」
「っ!知らないっ集中しろっ馬鹿!オマエわざとやってるだろうこのエロオヤジ!」
「…ええハイまあおっしゃるとおりエロオヤジです。
では月くんのご要望にお応えして、このまま生クリームプレイかチョコレートプレイでも敢行してみますかね」
「はああ?!っ…はうっ…んっん、んっ」
「で、月くんどっちがいいですか?」
「…っ…死ね…っっ───
………っっ!」
立て続けに穿たれ抉られると、もう我慢も限界だった。
全身がビクビク痙攣をおこし視界がまっしろに染まる。
意識が飛びそうになる高揚と失墜。触ってもいない自身から白濁を放ちつつ、埋め込まれた最奥で竜崎もまた、
達したのを感じた。
首筋に掛かる荒い息づかいと、ぬめる互いの体温。噛みつくみたいに残されたキスマークは歯形で。
キツイくらい抱き締めてくる両腕。心地いい。
抱き締めかえして、何度もなんども音を立てながら口づけを交わして、
それからおもむろにセックスの最中の態度について(主に竜崎のだ)盛大にケンカして、
暫くすると仲直りして、生クリームとチョコレートケーキを半分こして食べて、苺とシャンパンで乾杯して、
クラッカーを鳴らして、また抱き締めあって、一つのベッドで毛布に包まり、
僕らは穏やかで優しい眠りにつく。
そう。今日はクリスマスイブだったから。
竜崎には僕の、僕には竜崎の存在自体が、すばらしいプレゼント。
一緒に居られるならば、それが何よりの幸福。奇跡。
まるで夢のような。夢ならどうか醒めないで欲しい。
もしかしたら目を覚ました時には、サンタクロースからのプレゼントが届いているかもしれないけれど。